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『トゥルプ博士の解剖学講義』

レンブラント・ハルメンス・ファン・レイン(1631年)

レンブラントの出世作といわれる団体肖像画です。外科医組合会館の記念図の依頼を受けたレンブラントが、当時の外科医組合長であったトゥルプ博士の解剖講義の様子を描いたもので、その講義に見入る弟子達の様々な目線、表情が個性豊かに描かれ高い評価を受けることになりました。要するにここに描かれた一人一人は、師弟関係という上下関係はあるものの、誰もが主役と言ってよいほどの存在であり、お金を払ってレンブランドに依頼したこれら組合員は、皆満足したわけです。トゥルプ博士の明快な講義に感服しながら手元に見入る者、人体の神秘に驚きを隠せない者がいる一方で、この絵を見ているわれわれに流し目を送る者、正面からこちらを見つめる者もいて、彼らは我々に「どうだい、トゥルプ博士の講義は?やっぱり当代一だよね。」などと語りかけているかのようです。またトゥルプ博士自身の視線もこの絵に描かれた弟子達を越えてその背後にいるのであろう見学者に向いているようで、この絵の空間的な広がりが窺えます。もしこのページを開けているのが三四会員であったら、学生時代の解剖学実習の頃をしばし思い起こして頂いて、その後トゥルプ博士の弟子になったつもりで再びこの絵をご覧下さい。皆様の若かりし時代へのつかの間のタイムスリップに、このページが少しでもお役に立っていただけたらと思いつたない解説を付けさせていただきました。

さてもっと好奇心旺盛な方のために

レンブランドの絵画を題材に、医学学術論文が出されているのはご存知ですか?

Bathsheba at Her Bath (Bathsheba with King David's Letter) という作品のBathshebaはダビデ王に横恋慕された絶世の美女です。夫の出征中に主君であるダビデ王から呼び出しを受けた美女の困惑と苦悩を描いたのがこの絵なのですが、このBathshebaの裸体をよく観察すると左乳房外側に陥没病変と腋窩リンパ節腫大が認められ、この女性は乳癌である可能性が高いというのです。
読書の秋ですので興味のある方は、この論文をPDFファイル形式で閲覧可能にしましたのでお読み下さい。